フライングステージから桃唄へ…と、その前に異界の話

さて、昨日でフライングステージの新こころの公演が終わりまして、今日から桃唄の方に参戦し始めるわけです。

今度の桃唄は一昨年から長谷と一緒に通っていた瀬戸内の大島にある青松園という施設の話をやります。
桃唄は震災の後、はじめてのにんげんがりをやって、そのあとカフェ公演をやってたので、本公演という形は本当に久しぶりです。

さて、今回は公演の稽古に本格的に参加する前に、自分がなぜ大島の仕事を引き受けて、長谷と共に大島に向かったのか。
っていうことを思い返しておこうと思います。

大島に行ってみた第一の感想は、大島は異界でありました。

DSCF3726
その異界というのは、実は子供のころからなじみのあるものでして、自分が生まれ住んでいる江古田の街にずっとあるものでした。

江古田の森公園という名前に今は名前も変わっているここら辺で一番高い山のような場所があります。
国立中野療養所。

そこは昔は結核病棟があり、坂本九さんも入所していたそうです。
母が子供のころは、結核病棟の中に通っていた中学の分校があったそうです。

私が子供のころには、既に結核病棟は閉鎖されていましたが、病棟そのものは残っており、近隣の悪ガキたちの肝試しに使われていました。

当然ながら、都市伝説的な怖い話から、心霊話までいろいろ逸話のある場所でありました。

そして、この国立中野療養所があったところは、小山になっていて、近くの湧水から流れ出る江古田川によって周りを削られ、ちょうどお濠のようになっておりました。
戦国時代の昔には、江戸城を作ったので有名な太田道灌が、としまえんで有名な豊島氏を滅ぼした戦いの時に豊島氏が陣張りをしたとかしないとか。

昭和の江古田では、哲学堂公園やら妙正寺川やら、国立中野療養所やら、暗渠やら、あちらこちらに子供ならもぐりこめるところがいっぱいあって、そういう異界の入り口に足を運んでいたものです。
今考えるとよく死ななかったものだな。と思います。

そういう感じで国立中野療養所にもぐりこんでは、中の標本を見てみたり、いろいろ観察をしては、怖い目にあって逃げかえるということをしていました。
結核病棟だったので、当然隔離された空間になっていて、中に焼き場もあったりして、子供ながらにここで死んだら灰にならないと出られないのか、なんてことを思っておりました。

とある夏の昼下がりに見た幻影があって、今でも覚えていることがあります。
ぶらりと怖いもの見たさに国立中野療養所まで自転車で行き、裏側の公園の柵を乗り越えて、いつもの通り、外周から病院を眺めて、怖いなー、でも、何かあるかなぁ。なんて、うろうろしていたところ。急に声をかけられました。
「どうしたの?」
澄んだきれいな声でした。
「なんでもありません。」
まさか、物見遊山でもぐりこみました。なんてことは言えません。
振り返ると、あまり観たことの無い白衣のようなナース服のようなものを着たきれいなお姉さんがこちらを見ていました。
すると、辺りが少し騒がしくなったなぁと思い、見まわすと、
子供が数名で、廊下から外を眺めながら、歯磨きをしていました。
何人かが気が付いて、手を振ってくれました。
「あまり見ない子ね。」
そう言われて、内心びくびくしていると、
「ここは入ってきてはダメなのよ。気をつけてお帰りなさい。」
という優しく声をかけてくれて、私はなんだか嬉しくなってしまい、
子供たちに手を振りながら、帰ってきました。
多分、結核病棟に入っていた子供たちだったのでしょう。

PHOTO_20150816_162752

(写真は過去のblogでアップした、カフェ公演の通し稽古の写真です。)

先ほど書いた通り、これは幻影です。
私が子供のころには、閉鎖されていたのですから。

怖い話がしたいわけではないのですが、子供のころから、そういう場所の名残がある場所を身近に感じてきたせいか、大島も異界といういい方はしましたが、身近に感じる何かでありました。

当然、ハンセン病と結核は意味合いが大きく違いますし、そこには誤解と差別があることはよくわかっています。ただ、隔離された場所とそこで暮らすこと、そして生きていた人が居たことを考えると、つながっているものがあるように感じたのです。

実際に大島に行って、ハンセン病の元患者さん(病気としては完治するものになっているので元が付きます。ですが、後遺症があります。)と話していると、そういうことではなかったのだなぁ。と感じることが多かったです。
うまくは言えないのですが、魂で話しをしているような感じです。
見た目や身体にとらわれず、それ以上の何かを人として交歓するような会話をさせてもらっているのだな。と。
きっと、それは僕がフライングステージの公演に関わっているときに、セクシャリティやジェンダーを飛び越えることが多いこととかと何か繋がるものがあるのかもしれません。
長谷はそのことを愛についてと言う言葉で語っていますが、僕は僕なりの何かを見出していきたいと思っています。

DSCF3669

刻一刻と私たちを取り巻く環境は、厳しい状態になっているという実感がありますが、人が人と繋がり、何かを生み出していくプロセスは人間が人間であるために必要な最低限の活動なのではないかと思っています。

ハンセン病の資料館などを見に行っても、彼らが人の役に立つことを渇望していたのを見ることが出来ます。
自分自身にふりかえると、演劇という芸術が人の役に立つと言うことはなんなのかをずっと考えています。

五月の末に高円寺でお会いして、僕たちが見る世界を一緒に体感してもらえればと思っています。
以下、公演情報です。
劇団桃唄309

『風が吹いた、帰ろう』
2016年5月25日(水)~29日(日)
座・高円寺1

港から、船で二十分のところに、美しい小島がある。
無知や誤解の元に「業病」「天刑病」などと呼ばれていた病。
ハンセン病。その療養所の島。
かつては、わたしやあなたと変わらない人たちでひしめきあっていた。
今は、ただ静かな島。まばゆい白砂。青々とした松。
手を伸ばせば届きそうな空。
想像してみよう。家族と引き離され、社会からほぼ隔絶され、
わたしやあなたは、何を感じながらここにいたのだろうか。
世の中は、つまりわたしたちは、なにを間違えたのだろうか。
繰り返す波が、浜に砂を運び寄せ、時に砂を削る。
織りなす思い、その海に漕ぎ出そう。
たとえ小舟しかなくても。

●公演情報
http://bit.ly/201605kfk

●タイムテーブル
5/25(水) 19:00
5/26(木) 19:00
5/27(金) 14:00 / 19:00◎
5/28(土) 14:00★
5/29(日) 14:00

※受付開始は開演の1時間前 開場は開演の30分前。
※★の回終了後、バックステージツアー(劇団まで要予約・無料)。
※◎の回終了後、ポストパフォーマンストーク。
※27日(金)14:00の回、28(土)の回は託児サービスがございます。
(定員あり/一週間前までに要予約/1,000円 申込み・お問合せ 座・高円寺
TEL 03-3223-7500)

●出演者
佐藤達
國津篤志
山西真帆
富山聡子
高木充子
楠木朝子

五十嵐ミナ(office HATTA)
竹田まどか
石坂 純(劇団ひまわり)
成本千枝
元尾裕介(カムカムミニキーナ)
山口智恵(大判社)
中嶌聡(劇団クレイジーパワーロマンチスト)
小林あや
近藤ミキヲ
綾田將一
さいとうまこと
関根信一(劇団フライングステージ)

ゲスト出演: 西山水木(プリエール)
※詳しい出演スケジュールは公演サイトにて順次発表いたします。

●チケット
全席指定・日時指定

●前売開始
4月1日(金)

●料金
○一般 4,000円
☆お得な各種割引チケットをご購入いただけます。

○はや割 3,500円 5月5日(木)までのお申し込み限定
※5月10日(火)までにご入金ください。

○学生 前売・予約・当日 2,000円
○小中高生 前売・予約・当日 1,000円
※中学生以上の方は受付にて学生証をご提示ください。
※小学生以上のお客様からご覧いただけます。小学生のお客様は保護者の方と一
緒にご来場ください。

●チケットお取扱い(上記全4券種)
○CoRich:http://bit.ly/t-05kfk
○劇団e-mail:kfk-2016@softbank.ne.jp
○劇団FAX: 03-3314-2446
○劇団TEL:080-9676-3553
※劇団に、メール・電話・FAXで直接ご注文の場合:
(1)お名前/(2)公演の日時・券種・枚数/(3)ご住所/(4)電話番号/(5)メール
アドレスをお知らせください。
折り返し、チケット代金お支払い方法についてのご連絡をいたします。

●その他チケットお取扱い(一般券のみ)
○座・高円寺チケットボックス TEL 03-3223-7300(10:00~18:00 月曜定休)
○座・高円寺WEBチケット http://za-koenji.jp/
○座・高円寺の劇場回数券「なみちけ」をご利用いただけます。
詳しくは座・高円寺のチケットボックス03-3223-7300までお問い合わせください。
※全公演に車椅子スペースをご用意しています。前日までに座・高円寺のチケッ
トボックス03-3223-7300へご連絡ください。
※障がい者手帳をお持ちの方は座・高円寺チケットボックスでご予約いただくと、
1割引になります。
○イープラス:http://eplus.jp

●会場
座・高円寺1
JR中央線 高円寺駅 徒歩5分/TEL 03-3223-7500
〒166-0002 杉並区高円寺北2-1-2
※駐車場はございませんので、お越しの際には公共交通機関をご利用ください。
※土日の中央線快速は高円寺駅に停車しませんのでご注意ください。

地図↓
http://www.momouta.org/m/products/p201605kfk/map

●企画・制作
ウィンドミルオフィス/劇団桃唄309
〒166-0003 杉並区高円寺南1-18-14 矢島ビル3F
http://www.momouta.org/