賢さと愚かさと演劇と。

「ふと、思ったんだけど、今の人類って始まって以来の愚かさなのかもしれないなぁ。なんか、そんなことを思ったんだけど。気のせいだとよいな。と、思う。」

って、書いたんだけど。
ちょっと言葉足らずだったみたいだから、書き足し。
一回書いたんだけど、消えてしまったので、もう面倒だな。
と、思ったけど大事なことかも、と思い直した。

僕が言っている「愚かさ」というのは、持てる情報の総量に対して相対的な「愚かさ」のこと。
そして、それが何に起因しているのかという点。
また、なぜそう思ったのか。ということ。

前から、「扱える情報量以上の過剰な情報を扱っている」ということをよく書いている。
だからと言って、既にスマホやPCから離れて暮らすということは無理だと思う。
それを使っているから愚かになったのか。というとそういうことではない。
相補的な意味では、使っているからということにならなくはないとも言える。

これらは、「賢さ」を求めるという行為に対しての絶望が一つの原因なのではないか。と思う。
この200年の間に人類は様々な権利を作り、より平等性が高く、人生においての選択肢を多く増やし、またある種の才能を見つけ出し、発展していくための時間を過ごしてきたと言えると思う。
そこには、「賢さ」に対しての憧れがあり、例えば日本では、平等、選挙権、保険、公教育などを充実していくことにまい進してきた面がある。しかし、それらが20世紀の中ごろに飽和していく。学生運動からの厭世的な世界観だ。これが世界を覆った。ただ、それは過去に何度も繰り返されたことであり、起きて当然のことでもある。ただ、一方で情報化社会が訪れた情報を手に入れることが簡便になり、また、それらによる価値の創造が行われるようになってきた。
情報というものは、それ単体では価値が想像できないが、それらに雰囲気が加味されると、途端に価値が生まれる。非常にいい加減なものだ。
そして、それらを正しく判断していくことはある意味では非常に困難である。
情報をうまく取りわけ、ある点からの正しさや真性を見出すことを「賢さ」ととらえていたのではないかと考える。そうだとして、次第に制御不能になっていく情報量に対しての絶望が訪れる、これが「賢さへの絶望」であり、「愚かさ」ではないか。
もっと言えば、賢さを手に入れることによる責任や重圧に耐えられなくなった。もしくはそれらを支えうるべき基盤を失ってきたということではないだろうか。
そういったことによる「賢さ」への絶望は、情報を甘受することに夢中になってしまう人を大量に作っていく。
では、果たして、この「愚かさ」への対抗する手段はあるのか。ということを考えた。

それは、そもそも人は得られる情報に限りがあり、それらを寄せ集めることにより、選別し、集合知を形成してきた。これはとても長い時間をかけてきたものだ。
社会を形成するということには、「賢さ」が伴う。社会に参画し、よりよい状態を作ることについての努力が必要となる。
賢さへの絶望は、それらを放棄しようとする。日々の中で情報を消化していき、次から次へと食い荒らしていく。これは麻薬のようだ。

大多数の人間は一人で生きるようには作られていない。
聞いたこと、話したことを誰かと共有、あるいは需要、拒絶していくことで、社会を形成していく。
これらのプロセスをしていくためには、自身の基盤になるべき帰属する場所、自尊心などが必要になっていく。特に、自尊心については、時に折れ、傷つくことによって、自意識を高めることで、他者との関係性を深く強固にするエンジンだと思っている。
自尊心が傷つくことは、確かに痛みが伴うが、それなくしては成長はしていかない。折れた心を癒す場所も必要だ。自尊心が傷つかないように配慮され続けることは、捕まり立ちしか出来ない赤子が自分の足だけで立つ練習をさせないのと同様である。
また、傷つかないために予め転んでばかりいては、いつまで経っても立てるようにならない。
自立的な環境形成に問題があるとも言える。
配慮すべき点に対してのずれをきちんと検証せずに、積み上げてきてしまったがゆえの「賢さへの絶望」であり、「愚かさ」なのではないだろうか。

そして、こういう訓練の場として、演劇は非常に効果が高い。
観劇ももちろんだし、やるということもいい。
そういう意味で、演劇は社会的に非常に有用性が高い芸術であると思う。

だから、演劇を観たらいいし、やってみたらいい。
それは、一つの賢さを手に入れる手段でもあり、愚かさと戦う糸口でもあり、人生を豊かにする知恵だと思う。

と、いうようなことを考えながら、作った作品を観てもらえると、とっても嬉しい。
でも、これを読んで、何かを観に行ってくれたら、それもうれしい。
観に行かなくても、演劇に興味を持ってもらえるとすごいうれしい。

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