リーディングとはなんぞや?
月曜日, 15 2月 2010
ドラマリーディングの仕方について
060117 作成 terrace 伊藤馨
序文 †
ドラマリーディングに限らず、演劇は人間の関係性を通した表現が中心的な論点になります。
稽古の過程において、俳優たちとスタッフがどうコミュニケーションをとっていたのかというのは、舞台上に如実に現れるものです。
ドラマリーディングは、戯曲を集まって読むという非常にシンプルなものですが、稽古の代わりになるディスカッションの過程で、戯曲についてどれだけの話し合いをしたのかということが、発表の際に大きく影響を与えます。このことを念頭に、非常に簡単で大つかみではありますが、下記にリーディングワークショップの進行覚書がかければと思います。
0 目的 †
ドラマリーディングは戯曲が上演された状態を想像させることを目的としています。
リーディングしている状態で完璧なものを目指すのではなく、想像させる隙を与えることにより上演状態を見せるということを目的とします。
いうなれば、戯曲から上演時のにおいを見つけ出し、それをにおわせることにより、想像させると言ったところでしょう。
1 準備 †
最低限必要なものとして、俳優(読み手)2名以上と戯曲。
これだけあれば、リーディング自体は行えます。
もちろん、出演者+ステージディレクションの人数がそろっていることが望ましいですが、俳優は2名以上であれば、出演者数+ステージディレクション(ト書き)の人数に足りなくても持ち回りなどで可能ではあります。
2 ストレッチ †
身体をほぐすということは、心をほぐすことにつながります。
身体を少し動かすことにより、活性をあげます。こうすることで、ディスカッションの盛り上がりを促したり、発表の時に声が出しやすい環境を作ります。
簡単であまり負荷が少ないものの方が良いでしょう。
3 グルーピング †
グループ分けをします。参加者の様子がわかりにくい場合にはランダムでかまわないですが、わかる場合にはグループ内での話し合いがしやすい状態を作ったほうが良いでしょう。
4 ファシリテーター †
運営サイドが人数的に余裕がある場合は、グループのディスカッションの様子を見つつ、ディスカッションが停滞しないようにディスカッションへの介入を行ってスムーズな進行を行えるようにファシリテーターというポジションを作ったほうがいいでしょう。
ファシリテーターは各チームに対して、演出をつけたり、役に対しての意見の押し付けなどがないかどうかということをチェックする役目でもあります。円滑にディスカッションを進行することを目的としてかかわります。
また、戯曲から演出的な要素に大きく話題が偏った場合に軌道修正をするのも大事です。
5 素読み †
配られたグループで一度声に出して読みます。
一セリフ、一ト書きという風に読むなどして、キャスティングしない方が実際に配役する時の参考になります。
また、正確に書いてあることを読むことを重視した方が良いでしょう。
6 ディスカッション †
戯曲に何が書いてあるのかということを中心におきます。
一人一人の意見をお互いに尊重して進めることがとても重要です。否定をするのではなく、受け入れることを重視して進めていくと円滑に進みます。
その際に登場人物やシチュエーションに対しての疑問点などに対して、簡単に口に出せる雰囲気を作ることも重要です。
ここでの話し合いによって、読み手のイメージを深めます。
発表時にはそのイメージが伝わることになります。
また、ディスカッションは結論が出る状態を作らないように短めに設定したほうがいいでしょう。時間が短いことにより、一つの話題に集中させすぎないようにしたり、一つ一つの発言をあまり考えずに発言させるということを目的とします。意見がまとまりすぎているものは話題としてかかわりにくいものなりがちなので、それを防止するためでもあります。
後述しますが、発表は完璧に近いものでないほうが、後のフィードバックの反応を受け入れやすい状態を構築できます。
7 中間発表 †
あくまで、中途の状態での発表であることを明確にしましょう。
そうすることにより、出来上がってないものを発表することに対しての抵抗感を薄くします。
ディスカッションで話し合ったものを構築する場としての中間発表という位置づけが良いでしょう。
8 フィードバック †
中間発表後に、全体で発表について聞いてみて、読んでみて気がついたことを散発的に言い合う場所として行います。
目的としては、グループごとの狙いや、読み方についての問題点をはっきりして、次のディスカッションの話の種を見つけることです。
先ほど、ディスカッションの項でも書きましたが、中途の状態で発表することによって発表者に逃げ道を作ることで、意見に対して素直な反応ができるようにすることが大事です。
注意点としては、槍玉にあげる、攻撃するなどということがないように進めましょう。
一つ一つの意見や疑問を尊重して扱うといった態度が求められます。
9 ディスカッション(2度目) †
先ほどのフィードバックを受けて、再度ディスカッションを行います。
キャスティングやキャラクターのバランスに関しての調整をメインに行う発展的なディスカッションになるでしょう。
ここでも時間は短めに設定するのが望ましいです。
10 成果発表 †
フィードバック、ディスカッションをして、中間発表で出た問題に対しての修正を行った形で行います。
ここで見る側が持っていて欲しいのは中間発表と変わった点について見ることです。
成果発表とは言っても、あくまでも未完成な状態で行ってるということをきちんと言いましょう。
11 フィードバック(2度目) †
成果発表に対してのフィードバックを含めて、ワークショップ全体の反省やリーディングをしてみて出てきた疑問点などを採集する場所として行うのがいいでしょう。
ここでも結論を出すというよりは、散発的ないろいろな意見が出ることを重視して行いましょう。
12 最後に †
ドラマリーディングは戯曲に関しての学習の基礎にあたります。
ベーシックな形で行うことにより、戯曲と親しむこと、戯曲をみんなで読むというシンプルな形で鑑賞することを目的としています。
想像力を駆使して見てもらうということを目的としているために、形としては未完成なものになりますが、読み解くこと、話し合うことに関しては、その時点での一番良好なある種の完成された状態が出来上がります。
どの戯曲を誰と読むのか?ということで、読み方やバランスのとり方は変わります。
その都度、その時間内でできる最大限を目指して作ることにより、観客に多くのイメージを与えることができます。
また、企画としてのリーディングですが、リーディングはベーシックな形の上演形態であるため、企画性の強いことをやることが困難です。
企画が読み手の上に大きく出てしまうと、見る側の想像力を阻害することになり目の前で起きてることだけになってしまいます。
リーディングで独自性を出すことは難しいです。
ただし、戯曲をどう選ぶか、誰が読むか、どう話し合いをするかと言う時点ですでに独自性や企画としての面白さは十二分に発揮されることと思います。
戯曲選定とキャスティングがリーディングの企画としての成否を大きく分けると言っても過言ではないといえます。
少し逸脱しましたが、大事なのは戯曲を肴に多くの人とコミュニケーションを図り、様々な戯曲を楽しむということが一番大事なことです。
この点から外れていかずに、より楽しく、面白く読みましょう。
060117 terrace 伊藤馨